子どもの発達に遅れがある場合、どうしても直面する問題に学校や学級の選択があります。
「これが正解!」という答えがない!
やってみないと合っているかが分からない! けど、合っていなくてもすぐには変えられない!
だから悩むし、決定しても「本当に良かったのかな?」と不安になる問題ですね。
私は、今はお母さんからお話を聞いてよりよい方法を一緒に考えていく相談(カウンセリング・&コーチング)を中心に活動していますが、これまでの経験で子どもに心理検査を実施して、その検査結果と関わり方の工夫などをお母さんに説明・相談に応じるということも行っていました。
子どもの状態を把握するための一つの方法として心理検査があります。
心理検査はIQ(知能指数)が出るため、それを目安として、子どもに必要な環境・関わりを探っていきます。
その中で、IQが60台~70台の結果が出た子どもの多くで、このテーマが問題となってきます。
IQで子どものすべてが決まるわけではありませんが、IQは知的な理解力を表しているため、子どものこれからを考えていくうえで完全に無視はできないものでもあります。
ここではIQを一つの目安(指標)として考え、その他視点として考えるべきポイントをお話してきます。

❀学級選択の際に考えるポイント
- IQ(知能指数)
- 子どもの性格
- 学年
まずは①IQ(知能指数)についてです。これは、WISC-Ⅳ(ウィスク)や田中ビネー知能検査と言われる知能検査の結果です。地域によっては、「IQがいくつ以下だったら支援級に行ってください」と言われることもあります。ただ、IQだけで、子どもの状態が把握できるわけではないので、②子どもの性格、③学年も考える視点として必要となってくるのです。
IQの目安としては、
概ねIQ80以上 → 普通学級
概ねIQ65~75 → 選択には子どもの性格が重要となる
概ねIQ60以下 → 普通学級での生活は厳しい
ここでの支援学級は、知的クラスと言われるものを想定しています。支援学級の中でも情緒クラスと言われるものもあり、そちらはIQ80以上の子どもも対象となっているため、子どもの状態によっては選択可能となります。詳細は、下方の『概ねIQ80以上の子どもの場合』をご参照ください。また、『概ねIQ60以下の子どもの場合』の考える視点も下方に記載しています。
特にIQ60台~70台で考えるポイントとなるのが、②子どもの性格です。簡潔に言ってしまえば、平等に与えられている学校という枠組みの時間を、子どもがどう捉えるかということです。学校の中で、授業時間と休み時間は、どの子どもにも同じ時間が与えられています。休み時間に比べれば、圧倒的に授業時間が長いわけです。ただ、休み時間に友達と遊ぶのが楽しいから、授業中は分からないことが多かったりしんどかったりしても、「学校楽しい!」と捉える子もいれば、休み時間は楽しいけど、授業中がしんどいから「学校しんどい…」と捉える子もいます。子どもの捉え方によって、どちらの学級の方が子どもにとってよいのかが変わってくることもあるのです。子どもが学校に楽しく行けること。それが何よりもお母さんの願いではないでしょうか。
授業時間・休み時間はみんな平等!
休み時間「楽しい!」 × 授業「しんどい…」 → 「学校楽しい!」
休み時間「楽しい!」 × 授業「しんどい…」 → 「学校しんどい…」
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子どもによって、総合的な捉え方が異なる!

最後の視点としては、③学年です。IQは、小学校高学年から中学生くらいで概ね安定(固定化)してくると言われています。低学年のうちはまだ変化していく可能性があるため、定期的に様子を見て、学年が変わる前にはどちらの学級が適当かを考えていくことが必要になります。この視点は高学年になっても必要にはなってくるのですが、高学年は子どもの意思がより明確になってくる時期ではあるため、普通学級に在籍している場合は無理に支援学級に変更する必要はないと私は考えています。ただ、中学は、担任制度もテストの行われ方もさまざまな側面で小学校とは大きく変わってきて、主体性、自己判断……と子ども自身で判断・行動するように求められることが増え、先生からのフォローは減っていきます。その中でどれだけ対応できるかを考えなければいけないため、普通学級でよいのか、中学から支援学級を選択した方がよいのか、あるいは、少人数規模の私立中学の受験が可能なのかなどを考えていくことが必要となります。
繰り返しにはなりますが、地域によっても学校や教育委員会が言う学級選択の基準は多少異なります。そのため、ここでお伝えした視点がすべて通じるとは限りませんが、迷ったときの1つの目安としていただければ幸いです。また、最終的にはお母さん・お父さんの判断にはなるのですが、お母さん・お父さんだけで考えるには非常に難しい問題です。困ったときには、ぜひ「お母さんのための相談室『Latehu(ラテフ)』」までご相談ください(^^)
❀概ねIQ80以上の子どもの場合
◎IQ80以上の子どもも対象となる支援学級 = 情緒クラス
今の日本の学校制度の中で、支援学級は2タイプがあります。多くの学校で設置されている支援学級は、知的クラスと言われるものです。知的な発達に遅れがある(知的障害と言われる水準)子どもたちのためのクラスです。IQ80以上ある子どもの場合には、このクラスには該当になりませんので、入ることができません。
支援学級のタイプのもう1つは、情緒クラスと言われるものです。このタイプの学級が設置されている学校は数が少ないのが現状です。情緒クラスは、知的な発達の遅れはない(知的障害ではない)ものの、授業中に座っていることが難しい、感情のコントロールの難しさがあって友達とトラブルになりやすい、不安や緊張が強すぎて普通学級規模の人数の中に入ることが難しいなど行動面・情緒面でなんらかの困難さを抱えている子どもたちのためのクラスです。
IQ80以上の子どもの場合、情緒クラスの支援学級のタイプに該当するかどうか、該当しない場合には普通学級在籍という選択になります。
お母さんによっては、IQ80台の子どもでも学習の遅れが気になるという場合もあります。たしかに広くとらえれば年齢相応の水準ではありますが、年齢相応の中の下方に位置する水準です。新しいスキルの習得や学習の理解には、同じ年齢集団の普通学級の中ではペースのゆっくりさが気になる場合もあるかもしれません。家庭や塾での放課後の手厚いフォローと無理強いしすぎない姿勢のバランスが必要になってきます。
◎支援学級以外の選択肢 = 通級指導教室(通級)
IQ80以上の子どもの学級選択において、もう1つの選択肢は通級指導教室(通級)と呼ばれるものがあります。通級は、何校かに1校しか設置されていません。週に何時間と利用する時間が決められ、在籍級の授業を抜けて、通級に行くことになります。また、通級の学校が通学している学校と別の場合には、在籍学校と通級の学校の間の送迎を保護者が行う必要があります。通級で行う授業内容は、コミュニケーションなどのソーシャルスキルを行う場合もあれば、国語・算数などの教科学習のフォローを行う場合もあったり、子どもの状態によってさまざまです。気になる場合には、詳細は学校の先生に尋ねてみてください!
❀概ねIQ60以下の子どもの場合
◎一日の中の過ごす時間=学校生活を有意義なものにするには?
IQ60以下の子どもの場合は、今の日本の学校制度の枠組みにおいては、支援学級か支援学校が妥当と言えます。一日の中で学校で過ごす時間は非常に長く、中でも授業時間が長くなります。普通学級の中では、この長い授業時間を「ただ座って過ごしている」だけになりかねないのです。学校に行っている時間は長いのに、習得できるものが非常に少なくなってしまいます。
支援学級は、学校により、在籍している子どもたちのタイプにより、授業形態が異なるので、一概に「こういうものです」と言えない現状はあります。お母さん方から普通学級を希望する理由として、「地域のたくさんの子どもたちを関わらせたい。同年齢の子どもたちからの刺激で学ぶことが多い」というのがよく聞かれます。子ども同士の関係の中で刺激を受けて成長していくという考えも、その通りです。これまでたくさんの親子の相談に応じてきた私としては、低年齢のうちは存分にその意見を尊重したいと思います。保育園・幼稚園の頃は、ある程度の理解ある環境は必要なものの、ぜひたくさんの刺激を受けられる環境を作ってくださいと答えています。ただ、小学生以上はそういうわけにはいきません。低学年は大人になっても必要となる基礎学力を固める時期となります。学力がすべてでは全くありませんが、過ごす時間が長い学校の時間を、子どもの将来まで見越して少しでも有意義なものにするためには普通学級が適当とは限らないのです。子どものペースで、少しずつでも確実に獲得できるようにするには、普通学級では厳しい現状があります。子ども同士の関係からの刺激は、学校以外の活動として地域活動への参加や習い事等でも補っていくことは可能です。
IQ60以下と言ってしまうと、IQ60とIQ61は何が違うんだという議論にもなってしまうことがあります。大きな違いはないというのが答えなのですが、一般化して文字のみで伝えるうえでは1つの基準を作らないと記載ができないので、IQ60以下と区切っています。ただ、その境界に位置する子どもの場合は、心理検査の内容や子どもの状態を見て総合的に考えていくことが必要となりますので、ご相談ください(^^)
◎支援学級か? 支援学校か?
支援学級は今はほとんどの学校に設置されているため、学区の学校に通うことができます。(地域によっては、まだ設置されていない学校もあり、学区外の学校になる場合もありますが……。)ただ、支援学校は、地域の学校の学区よりも広範囲でエリアが決められていて、エリアに1校となり、通学バスで通うようになります。
支援学級と支援学校のどちらが妥当かは、発達段階や子どもの状態などを考え、総合的に判断していくことが必要なため、明確な基準をお伝えすることが難しくなります。ただ、伝えられるとしたら1つだけです。それは、排泄などの身辺自立ができえいるかどうかです。
支援学級の先生は、残念ながら特別支援を専門的に学んでいない場合もあります。一方で、支援学校の先生は特別支援を専門的に学んでいる先生ばかりです。教科学習に関しては、とりわけ専門的に特別支援を学んでいなくても対応できる場合もありますが、小学生以上に対して身辺自立に向けた対応は専門的に学んでいないとかなり厳しくなります。小学校入学時点で身辺自立が出来ていない場合、支援学校に進学すればオムツが外れる可能性は広がりますが、支援学級に進学すれば一生オムツでの生活になる可能性が高くなると考えた方がいいかもしれません。
ただ、100%ではないので、しっかりと見学し、疑問に思ったことは聞いて、誠実に答えてくれる先生かどうかを見極めていくことは必要になります。
最終的な判断はお母さん・お父さんが行わなければなりませんが、お母さん・お父さんだけで考えることが非常に難しい問題でもあります。困ったときには、ぜひ「お母さんのための相談室『Latehu(ラテフ)』」にご相談ください(^^)
