とあるお母さんからの、こんなご相談!
「『ほめる子育ては危険』とネットで見たけど、ほめることをやめると注意ばっかりになって、私もイライラしてくるし、子どももずっと機嫌悪くなるし…。子どもにどう関わっていいか分からなくなってきた…。」
昔は、「子どもはほめて育てなさい!」と言われていた時代もあります。今は、「ほめる子育ては危険!」と言われることがあります。
結局、どっちがいいの?? と混乱してしまいますよね……。
❀人からの承認の有無が、その子の、その後の人生を左右する!
アメリカの心理学者マズローが唱えた「欲求の5段階説」というものがあります。
段階1 | 生理的欲求 | 食欲、排泄、睡眠 |
段階2 | 安全欲求 | 基本的な安心感が日常にある(過度な恐怖心・不安にさらされていない) |
段階3 | 所属と愛の欲求 | 属すべきコミュニティ(家族、幼稚園・保育園・学校……)があり、さまざまな愛(人とのポジティブな触れ合い)を感じることができる |
段階1~3までは最低限の基本的欲求で、環境的に満たされることが必要となるものです。
このあとで説明する段階4~5も含め、5段階の欲求は、人は生まれつき、誰もが持っているものです。ただ、段階1~3が全く満たされない状態が続くと、段階4~5の欲求を感じることがなくなってしまいます。段階1~3は満たすことができる環境にある状態で、段階4の承認欲求が満たされるかどうかが、その人が人生を楽しむことができるか、なにかとネガティブになってしまうかなどに影響を及ぼす、非常に重要な要素となるのです。
段階4 | 承認の欲求 |
「認められたい!」 「尊重されたい!」 → 自分を認めることにつながる(自己肯定感) |
段階5 | 自己実現の欲求 |
「これがしたい!」 「こんな人になりたい!」 → 人生を楽しむこと、自分らしく生きることにつながる |
段階5の自己実現の欲求は、段階4の承認欲求が満たされる程度により、欲求の強さは変わってきます。つまり、自己実現欲求は、承認欲求の満たされる程度による結果となるため、外部からアプローチしていくことは困難です。子育ての中で、子どもの人生をよりよいものにするためにお母さんができることとして、「生理的欲求」、 「安全の欲求」、 「所属と愛の欲求」を満たすことは最低限として、「承認欲求」を満たす=子どもをほめる、認めることが非常に大切となるのです。
ただし、ここで1つ注意していただきたいのは、ここまで「欲求を満たす」と表現してきましたが、100%満たしすぎる必要はありません。ハングリー精神という言葉があるように、多少の飢えが「満たすためにどうしたらいいか」と自分で考える力につながっていきます。常に欲求が満たされている状態は、欲求を感じることがなく、自分で自分の身体の感覚や気持ちに気付く機会がなくなりますので、「何も感じない」、 「何も考えない」受動的な人間となってしまいます。「欲求を満たすことができる環境(100%満たすことができなくてOK)」があることは必要だけど、「先回りして満たしすぎる」ことは危険なのです。子どもが欲求を感じた(例;お腹がすいた) → 欲求が満たされた(例;ご飯を食べて空腹が満たされた)というステップを踏むことが大切なのです。

「生理的欲求」 「安全の欲求」 「所属と愛の欲求」
→ 最低限満たされる環境であること
「承認欲求」 ← ここがお母さんが満たしてあげる重要なところ!
「自己実現の欲求」 ← 承認欲求が満たされた結果
❀「ほめる子育て」は危険といわれる理由は?
ここまでお読みいただいた中で、ほめることが大切な理由はご理解いただけたかと思います。では、なぜ、近年は「ほめる子育て」は危険といわれているのでしょうか?
それは、ほめ方にあります。
「いいね!」、 「えらいね!」、 「いい子だね!」
このようなほめ方が危険なのです。
『何が』 「いいね!」なのか?
『どんなところが』 「えらいね!」なのか?
『何を見て』 「いい子だね!」と思ったのか?
それらを伝えていくことが、非常に大切になるのです。
ただ「いいね!」、 「えらいね!」、 「いい子だね!」と伝えるだけでは、子どもはどういうところがよいことなのかが分からず、全人格として「自分はえらいんだ!」という認識になっていきます。『どういうところが』ということが分からない状態は、がんばる方向性・努力する方向性が分からず、土台(幹)が非常に脆い状態です。うまくいっているときは問題ありませんが、うまくいかなかったときに、ちょっとしたつまずきで、すぐに挫折してしまう可能性があるのです。一方で、『どういうところが』ということが分かっている場合には、ちょっとしたつまずきに遭遇しても、「このときにはこうだったから、こうしてみたらどうだろうか?」などと具体的な自分の行動を振返りながら「できるようにするためには、どうしたらよいか」を考えることができるのです。
『どういうところが』として、伝える内容には『①行動』、 『②能力』、 『③信念・価値観』、 『④自己認識』の4段階があります。上にいくほど人の深層に入り込むもので、下ほど表面的に見えているものになります。子どもに対しては、『①行動』をしっかり伝えていければ大丈夫です。小学校高学年や中学生くらいになってくると、時々、改まって話すようなときがあれば「毎日きちんと宿題やってるけど、これって決められたことを守ってやることができてて、お母さんはすごいと思ってるよ!」などと『②能力』についても触れられるといいでしょう! この例で言えば、「宿題に取り組んでいる」ことは『①行動』として日々ほめていきます。そして、「毎日宿題に取り組むことができる」ということは「決められたことに取り組むことができる」という抽象度を上げて、ほかの行動も包括した表現へと変えて、『②能力』をほめることを時々行っていけるといいでしょう。『②能力』をほめることは『①行動』をほめることに比べて、難易度が上がりますので、「難しいな~」と感じる人は、『①行動』をほめることを重点的に行っていければ大丈夫です!
「いいね!」 「えらいね!」のほめ言葉だけを伝え続けると、
⇒ ちょっとしたつまずきで、すぐに挫折することに‥‥
ちょっとしたつまずきを、
次の可能性へと広げることができるようになるためには、
⇒ 子どもが行っている行動を具体的に伝えてほめる!
できる人は、時々、能力に触れたほめ方も取り入れてみよう!
人が生きるうえで、ほめられることは欠かせない!
ほめることが危険なのではなく、
ほめ方によってマイナスの影響を及ぼすことがある!
ほめるときには、行動を具体的に伝える!
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