「なんで、こんなあたり前のことができないの?」
これまでに、そんな風に感じたことがあるから、この記事をお読みいただいていることでしょう。これまでたくさんの親子と関わってきた中で、お母さん・お父さんの話に出てくるのは当然ながら不安なこと・心配なこと。つまり、それは「うちの子どもは、○○ができない」ということ。不安なこと・心配なことを相談することは決して悪いことではありませんし、「○○ができないな~」と感じて成長を促すための関わりを考えていくことはとても良いことです。でも、その裏には実は「できるのがあたり前」という考えが無意識の中に存在しているのです。
❀無意識な感覚「できてあたり前」
人は経験を重ねていく中で、「あたり前」や「普通」という判断基準が出来上がっていきます。この判断基準にあてはまる場合には脳がOKとみなし、行動へと移すように信号が伝達されていきます。一方で、判断基準にあてはまらず脳がNGとみなした場合には、フィルターを通過することができず、はじき出されていくのです。自分の意識として上がってきているものは、OKとみなされたもののみなのです。周囲の人の行動が、自分のOKとみなしている基準と異なると違和感やイライラとして生じやすくなるのです。
この判断基準は、網のようなフィルターとして存在しているとイメージしてみてください。このフィルターは、人によって、網の目の大きさが異なれば、厚みも異なります。年齢が低いうちは、薄く網の目が大きく、基準が固定化されていない状態で、柔軟性が高くなります。しかし、年齢を重ねていくと、さまざまな経験の中から基準が固定化されてきて、フィルターはどんどん厚くなり、網の目が小さくなり、限られた基準しか通さない状態になっていくのです。人によって、このフィルターを通過できるものは異なってきます。
自分の基準と異なる
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違和感やイライラが生じる

❀フィルターを通過する内容の違いがイライラを引き起こす
子どもは、経験が少ない分、このフィルターは薄く、網の目を大きく、さまざまなものを通すことができます。それは、つまり柔軟性が高いという状態ではあります。ただ、親が「あたり前」「普通」だと思っていることを、子どもが同じように思っているわけではないため、親が指示した行動を「あたり前」のようにできる日もあれば、全くできないという日もあるのです。子どもにとっての「あたり前」を作っていく発達途上ということなのです。
子どもが幼稚園・保育園くらいのうちは、子どもに意思があってもそこまで強くはないため、親の思いで「あたり前」を通してやらせることも可能です。しかし、小学校・中学校と子どもの年齢が上がってくると、子どもの中にも子どもの基準でのフィルターが出来上がってきます。このフィルターは親子とは言え、子どもの得意な情報入力のパターンや、園や学校という家庭外の環境が親の育った環境とは異なるために、子どもは親とは異なるフィルターを形成していきます。つまり、親が「あたり前」と思っていることは、あくまで親にとっての「あたり前」であり、子どもは「あたり前」とは思っていないことが多くあるのです。これも、大人同士だったら当然のように理解してそれなりに柔軟性を持って考えることができる人も、自分の子ども相手だと全面に自分のフィルターが出てきて柔軟な対応ができずに、イライラしてしまうことが多くなるのです。
得意な情報入力パターン×生育環境
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親子でも異なるフィルターを形成
❀あなたにとっての「あたり前」は、本当にそうでなければならない?
すべてがすべて「あたり前」がいけないというわけではありません。その「あたり前」が社会で生きていくためには重要な場合もあります。ただ、それに固執しすぎてしまうと、子どものフィルターと大きな違いが生じてきて、親子ともに苦しい状態になってしまいます。まずは自分自身がどんな「あたり前」を持っているのか、「~ねばならない」と考えているものはどんなものがあるかなと考えてみましょう。それらは本当にそうでなければならないのか? と少し疑ってみましょう。常識を疑うと言うと大きなことに聞こえるかもしれませんが、それくらいの気持ちで、「それって本当に必要なこと」と疑ってみることで、自分のフィルターの網の目を広げたり厚みを薄くしたりできます。そうすることで、子どものフィルターを少し理解することにつながるかもしれませんし、柔軟に対応ができることでイライラが減ってくることでしょう。
お母さん自身が「~ねばならない」と考えて、
子どもに伝えていることは何??
親子とは言え、「あたり前」と感じること(フィルター)は異なる!
お母さん自身が「~ねばらならない」発想に捉われて、苦しくなっていることも!
まずは「~ねばならない」と思って、子どもに指示していることがないか振り返ってみよう!