「ほめることが必要なのは分かっているけど、どうやってほめたらいいのか分からない…」
「ついイライラしちゃって、なかなかほめられない…」
「子どもはほめて育てた方がいい」など言われたことは一度や二度ではないでしょう。ほめることが大切。これは、おそらく多くの方が、頭では分かっていることでしょう。でも、うまくほめられない、ついイライラしちゃってほめるよりも先に怒ってしまうなどが日常的には起きていることでしょう。また、日本人にとっては、文化的にほめられ慣れていないことも多く、ほめられることも、ほめることも照れや恥ずかしさを感じるということも多くあります。では、なぜほめることは大切なのでしょうか?
❀ほめる目的は、「認められている」と伝えること
ほめることが大切なことは多くの人が知っているでしょうが、ただ闇雲に「いいね!」「えらいね!」などとほめればいいというものではありません。ほめることがなぜ必要なのか? これは、子どもが「認められている」という経験が人格形成において非常に重要だからです。ほめられることが大切なのではなく、ほめられるという経験を通して、「自分は認められている」「人に受け入れられている」という経験を増やしていくことが大切なのです。この認められている・受け入れられているという経験は、自己肯定感を高めることにつながり、さまざまな行動の原動力へとなっていきます。
ほめることは、認めることを伝える方法の1つにすぎない!
認められる経験
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自己肯定感
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行動の原動力に
自己肯定感が高ければ、積極性、チャレンジ精神、向上心などを高くもっていて、さまざまなことに意欲的に取り組んでいくことができます。一方で、自己肯定感が低いと、消極的、内向的、マイナス思考などの傾向が強くなり、環境変化に弱く不適応を起こしたり、新しいことをするのを嫌がったりすることが多くなります。
親の性格として、ほめることが苦手ということもあるでしょう。それは、それでOKです。「ほめなければならない」ではなく、子どもが「認められていると感じる」ことができることが大切なのです。ほめることは認めていると伝える1つの方法ですが、認めていると伝えるための方法はほかにもあります。たとえば、「ありがとう」とお礼を伝える。これも、認めていると伝えるための1つの方法です。「ありがとう」が飛び交う家庭は、それだけでも暖かく、幸せそうな親子関係が目に浮かびますね。また、ありがとうだけでなく、親のうれしいなどのポジティブな気持ちを言葉に伝えることも、認めていると伝える1つの方法です。「~してくれてうれしい!」「~してくれて助かった!」と言葉にすることですね。気持ちを素直にすることも苦手な人は多いですが、親が言葉して伝えることが多いと、子どもも自然と気持ちを言葉にすることが素直にできるようになります。反対に、親が気持ちを一切言葉にしないのに、子どもに「気持ちをちゃんと言いなさい!」と言ってもなかなか難しいですね。
中には、「ありがとう」や自分のポジティブな気持ちを言葉にすることも苦手! ハードルが高い! と思う方もいるかもしれませんね。そのような方は、子どもが行っている好ましい行動(できている行動)を、事実としてそのまま「~してるね」「~できたね」と言葉にするだけでもOKです。言葉にして伝えられることで、「この行動はいいんだ」「これをすることはいいことなんだ」と認められたと感じることができるのです。ただ、そのまま言葉にして伝えると言っても表情や態度によっては、認められていると受け取れない伝え方になってしまう場合もありますので、次に説明するほめるときのポイントをしっかり読んでくださいね。また、この「好ましい行動を言葉にする」方法は、子どもは好ましい行動を始め、ほめるべきなのは分かっているけど、直前の状況から親の気持ちとしてイライラがおさまらず、ほめることができないというような場面でも有効になります。以下のポイントのいくつかに注意する必要はありますが、事実を言葉にするだけなので、ほめたりポジティブな気持ちを伝えたりすることよりも、自分の気持ちと言葉とのギャップが少なくなるためにハードルが低くなります。
(ほめるための方法の詳細は、「子どもをほめるための5つの方法」に記載していますので、そちらも参照ください。)
認めることを伝える方法は、「ほめる」だけではない!
「ありがとう!」(お礼)
「~してくれてうれしい!」「~してくれて助かった!」(ポジティブな気持ち)
「~してるね!」「~できたね!」(行動の言語化)
❀ほめるときのポイント
子どもに認めていると伝えるということは、親の一方的な行動だけではなく、子どもが受け取りやすい方法で伝えていくことが大切になります。7つのポイントに注意して伝えることで、親が伝えようとしている気持ちを、子どもがしっかりと受け取るということにつながっていきます。

①視線・身体
まずは視線や身体の向きを、子どもの方に向けましょう。しっかりと「あなたに伝えている」ということを見せることが大切なのです。どんなに言葉でほめるなど認める言葉をかけていても、見え方として表現できていなければ、その言葉に込めた本当の意味は伝わらないのです。家事など何か作業をしていたとしても顔だけは子どもの方に向けるようにしましょう。
②表情
これも、視線や身体と同じで、見え方です。言葉は「すごいね」と言っていても、表情がイライラしたような表情で言っていたらどうでしょうか。どんなほめ言葉を言われたとしても表情が伴ってなければ、こちらもその言葉で伝えたい思いは伝わりません。認める声掛けをする時には、笑顔や微笑み、穏やかな表情を心がけましょう。
③声の調子
声の調子も、言葉の内容以上に重要なものとなります。たとえば、内容としては怒っていても、明るいトーンで言っていると、あまり怒られている印象を与えないのです。反対に、ほめている内容でも低いトーンで言われているとほめられている印象を与えないのです。つまり、ほめるなどの認める声掛けのときには、高めの明るいトーンにすることを心がけましょう。
④言葉
内容はもちろんポジティブな内容です。「できたね!」「すごいね!」「やってるね!」など子どもの今の行動を認める声掛けです。ここで心がける必要があるのは、短く伝えるということです。ついついやりがちなのに、「できたね!早くからやっておけば、もっと長くゲームができたのに…」と皮肉を言ってしまうことです。折角、最初に「できたね!」とほめているのに、後ろでネガティブなことを言ってしまっては、全くほめ言葉の効果がなくなり、子どもにとっては否定された印象を与えてしまいます。言いたくなるときもあるかとは思いますが、皮肉や小言などネガティブなことはグッと飲み込んで、ポジティブな表現のみで留めましょう。
⑤行動とセット
ただ「すごいね!」「嬉しい!」などのほめ言葉や親の気持ちだけでなく、子どもが今行った行動を必ず伝えるようにしましょう。具体的に言葉にして伝えることで、何をしていることが良いと思っているのかが子どもに伝わりやすくなります。
⑥タイミング
家の中での出来事に関しては、子どもが行動したら"すぐ"に伝えましょう。子どもの行動と認められる声掛けへの時差があると、どのタイミングの何の行動が良かったのかが曖昧になってしまいます。基本的にはすぐに認める声掛けを行うことを心がけ、どうしても直後に言えなかったけど伝えておきたいというときは後から伝えることを意識できるといいでしょう。
また、もう一つ重要なタイミングが、100%の完了を待たないということです。日常の活動は、一つの行動が一瞬で終わるものよりも、一連の流れがあって時間がかかるものが多くあります。100%の完了を待っていると、その途中でどうしても中断してしまうなど注意する声かけが生じやすくなります。一連の流れへのモチベーションを維持し続けるために、「10%できた!」「25%まで進んだ!」「50%終わった!」などと認める声掛けをこまめに行うということも必要になってくるのです。
⑦「あたり前」なことでも
人は、自分にとってあたり前と思うことは、認めようとしない傾向があります。親にとってはあたり前でも、「あたり前があたり前にできる」ということは、できている、すごいことなのです。「おはよう」と挨拶をする、自分で起きてくる、靴を揃えるなど日常の生活の中で、できてあたり前と思っていることでも、子どもがそのあたり前の行動を行った事実を言葉にして伝えるなど「ちゃんと見てるよ!」というメッセージを伝えてあげましょう。
ほめるときの7つの注意点
① 視線や身体の向きを、子どもの方に
②表情は、笑顔や微笑み、穏やかな表情で
③声の調子は、高めの明るいトーンで
④ポジティブな表現のみに(皮肉や小言を言わない!)
⑤ほめ言葉は、行動とセットで
⑥100%完了を待たずに、始めた・やっている・終わったタイミングで
⑦あたり前があたり前にできていることも