「ほめることが大切」
子育てする中で、そんなことを言われたり、本で読んだりしたことは誰もがあるのではないでしょうか。ただ「ほめる」のではなく、どのような行動に対して「ほめる」のか、ほめない行動に対してはどのように対応したらよいのか、子どもへの関わり方は日々、悩んでいることでしょう。子どもへの関わり方を考えるうえで、まずは行動のタイプを3つに分けて、それぞれに対して、対応の仕方を考えていきます。
❀行動の3つのタイプ
まずは行動を以下の3つのタイプに分けていきます。
- 好ましい行動
- 好ましくない行動
- 危険な行動・許しがたい行動
『①好ましい行動』とは、その名の通り、好ましく、継続あるいは増やしたいと思う行動です。ここで大切なポイントは、親が「してほしい」と思う行動ではなく、「今、子どもができている行動」です。この行動を考える際に、ついつい忘れがちなのが、親の中で「あたり前」と思っている行動です。朝起きたら「おはよう」と挨拶をする、家に帰ってくると手洗い・うがいをする、脱いだ服を洗濯機に入れるなど、日常の生活の中であたり前に行われていることも、『好ましい行動』に含まれます。
また、「声をかけるとできる」というような「○○があれば」という状態でも、できるものがあれば、それも『好ましい行動』に含まれます。1回の声掛けでできるのか、3回の声掛けでできるのか、声掛けなしでやってほしいけど今は声掛けがあれば「できる」と思えるのであれば、『好ましい行動』に入れましょう。もし、「10回声を掛けないとできない」というような「できない」という感覚であれば、次の『好ましくない行動』に含めていきます。

『②好ましくない行動』とは、減らしたい行動です。声掛けの回数を減らしたいというのも、ここに含まれます。「5回以上声をかけてもゲームを止められずにお風呂に入らない」という状態の場合には、「5回以上声をかけても、お風呂に入らずにゲームを続けている」と『行動』を表現することができます。ここで注意が必要なのは、「~しない」という表現ではなく、子どもは何をしているのか、「~しないで、○○している」という表現で考えていくことです。

『③危険な行動・許しがたい行動』とは、子ども自身、あるいは周囲の人(友達など)に危険が及ぶ行動、社会的などに許されないと思う行動です。たとえば、道路に飛び出す、友達を叩く、人の物を盗るなどがあります。子どもによっては、特にそのような行動は見られないという場合もあります。その場合は、『①好ましい行動』と『②好ましくない行動』への分類のみで、『③危険な行動・許しがたい行動』は該当なしで大丈夫です。
「危険」という判断は人によって異なる場合があります。また、「許しがたい行動」に関しても、社会的マナーとして多くの人に共通して許されないものもあれば、人それぞれの価値観として個人的に許せないと思うものもあります。この行動のタイプ分けを、夫婦などご家族で行った場合、同じ行動を指していても『②好ましくない行動』と『③危険な行動・許しがたい行動』への分類の仕方が違うことがあります。そのような場合には、それぞれの価値観で、「そのように考えているんだな~」と、一旦、お互いにその分類を受け入れましょう。分類が違うと、この後に説明する対応の仕方が変わってきますので、お互いの分類の仕方を受け入れたうえで、ご家庭の方針として、どういう判断を行うのかを相談して決めましょう。
ただ、注意が必要なのは、『③危険な行動・許しがたい行動』が『①好ましい行動』『②好ましくない行動』よりも非常に多くなっている場合です。それだけ大変な状況で、子どもへの対応に苦慮されている状況であろうことが推測できますが、親の意識として危険であったり許しがたいと思う行動にばかり目が向いている状態であり、日々の中では必ずどこかに好ましい行動もあり、危険や許しがたいまででなくても好ましくないと考えてもよい行動もあるはずなのです。ただ、『③危険な行動・許しがたい行動』が3つのタイプに分けた中で最も多くなる場合には、ご家庭だけで担っていくには、お母さん・お父さんの疲弊感も考え、負のスパイラルに陥るだけですので、ぜひご相談ください!

❀行動のタイプごとの対応方法
まずは『①好ましい行動』への対応です。これは、分かりやすいと思いますが「ほめる」ですね。ただ、「ほめる」と言っても、「すごいね~」「できたね~」「上手だね~」などとほめ言葉を言えばいいというものではありません。年齢が低いうちは、しっかりとほめ言葉でストレートに伝えることで、子どもは喜んで、嬉しくなり、ほめられた行動を増やしていくということにつながるでしょう。一方で、年齢があがってくると、照れなども加わり、ストレートなほめ言葉は「うるせぇ!」「これくらいで何言ってんの?」など素直に受け取れなくなってくることが多いのです。多くの方がイメージしやすいように導入では「ほめる」と表現していますが、要は「認められる」ことが大切なのです。その行動をしたことによって、認められた、受け入れられているという経験が重なると、その行動を増やしていくことにつながるのです。この「認める」ことを伝える方法としては、「ほめるときの5つのポイント」でより詳しく説明していますので、そちらをご参照ください。
好ましい行動
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ほめるなど、子どもの行動を「認める」対応
次に、『②好ましくない行動』への対応です。3つの行動のタイプの対応の中で、これが要となるかもしれません。好ましくない行動への対応に関しては、最終的には好ましい行動への対応「認める」につなげていくことが大切なのです。「認める」対応につながることで、好ましい行動が増え、自然と好ましくない行動が減っていくという状態になっていきます。
好ましくない行動への対応のポイントは、
①予告・相談
②穏やかに淡々とした指示
③好ましくない行動には反応しない
④好ましい行動の100%達成を待たずにほめる
これを全部説明していくと非常に長くなり、別の記事として書いていますので、そちらをご参照ください。好ましくない行動への対応は、正直、親側の感情のコントロールや心の余裕などエネルギーを要することが多くなります。非常に柔軟性や実践力が高い方であれば、こういうのを読んで自分で試して実行していくことができる方も中にはいますが、多くの方は日常の忙しさや余裕のなさで頭で分かっていてもできないというのが現実です。でも、それはあくまで一人でやろうとするからの話です。親自身の行動パターン(癖)を変えていくわけなので、親自身が今の生活の中で「これならできる!」というのを、客観的な視点も交えながら考えていくことが必要なのです。親と子どもの相互作用で現在の親子関係は構築されており、その組み合わせは、世の中で自分たちの親子間でしか存在しないのです。つまり、一般論として分かっていることを、どう自分たち親子関係に当てはめて実践的に考えていくか、これには専門的視点を交えて、一緒に考えていきましょう!
好ましくない行動への対応を変えることで、
親子関係はグッと変化を生み出す!
それには、親のエネルギーが必要!
一人ではできなくても、コーチがいればできる!
最後に、『③危険な行動・許しがたい行動』への対応です。これは、『①好ましい行動』への対応「認める」を全く行わずに、対応しても効果は一切ありません。土台としては、『①好ましい行動』と『②好ましくない行動』への対応が行われたうえで、『③危険な行動・許しがたい行動』への対応を行わないと、ただ親の権力で圧力をかけて、子どもの行動を抑制しているだけで、かえって子どもの精神発達への影響としては悪影響を及ぼす可能性もあります。
『③危険な行動・許しがたい行動』への対応としては、罰(ペナルティ)です。子どもがやりたいと思う行動を一時的にできなく制限することや、してはいけないことをした代わりに子どもがやりたくないことを一時的に行うようにすることです。おそらく多くのご家庭でも自然とやっていることがあるのではないかと思うので、イメージはできるのではないでしょうか。ただ、よく聞くことで注意が必要なのは、たとえば「約束を守らなかったから一週間ゲームをできないように取り上げた」など長期間のスパンで罰を与えることです。罰を与える意味は、好ましい行動への変化を生み出すためのきっかけ作りです。一度言われたことで、即行動を適切な方向へ変化できる人がどのくらいいるでしょうか。大人でも何度も同じ間違いをしてしまうことはありますよね。子どもにとって、学習の機会をたくさん作ってあげることが、より良い行動を導くことにつながるのです。つまり、罰を与える期間は短く、何度も繰り返してより適切な方法を学習させることが大切なのです。
好ましい行動と好ましくない行動への対応を、まずは徹底的に!
その対応ができていないと、
危険な行動・許しがたい行動への対応は効果を発揮しないだけでなく、
子どもの発達に悪影響を及ぼす!