「毎日言ってるのにできない!」
「何度注意しても同じことをする!」
子育てをしていると、こんなイライラを日々、抱えていることでしょう。「何をすることができないのか」「何をし続けているのか」 行動を見ているようで、実はこの行動の表現が的確にできている人は非常に少ないのです。この行動の表現の仕方(行動の捉え方)が的確にできると、子どもへの関わり方も自然と選択肢が増えてくるため、とても重要なものなのです。でも、多くの方が、日々の忙しさで目先のことばかりに意識が向いてしまい、なかなか重要性を理解してもらえないものでもあるのです。
❀『行動』とは?
お母さんたちと話をする中で、気になることなどを聞いていると、「~しないで困っている」という話がよく出てきます。普段、そのような表現で子どものことを考えていませんか? その困っていることに関してはごもっともなのですが、『行動』を考えるうえでは、「~しない」という表現は行動にはならないのです!
行動とは、
「見えるもの・聞こえるもの・数えられるもの」であり、
「~する」で表現されるものになります。

先ほどの「~しない」という状況は、子どもの意思ではなく、親の意思に基づいた行動が行われていないだけの現象です。その状況の中で、子どもの行動としては何かをしているはずなのです。『行動』を表現する際には、「○○しないで、~している」という表現で行動を捉えることができるようにしていきましょう。
また、「優しい」「きれい・汚い」などの形容詞、「すぐに」「とても」などの副詞においても、『行動』ではありません。たとえば、「優しい」という状態は、何をもって優しいとするのかは人によって違いがあります。友達にオモチャなどを貸してあげた場面を見て優しいとするのか、小さな子と一緒に遊んであげていることを優しいとするのか、お母さんのお手伝いをしてくれて優しいのか、様々な場面があります。『行動』を表現する際には、「優しい」とまとめるのではなく、そう思った理由として子どもが「何をしているのか」を考えるようにしましょう。
「すぐに」や「とても」などの副詞の表現においても、何をもって「すぐに」「とても」なのかが曖昧な表現なのです。できる限り、具体的にすることが大切なのです。回数や時間という、他の人が聞いても、同じ理解ができるような表現を心がけましょう。

❀『行動』かどうか考えてみよう!
ここからは、10個の例をもとに、『行動』の表現として適切かどうか考えてみましょう。『行動』の表現として適切ではない場合には、どのような表現にすると適切な表現になるかも考えてみましょう。
例① 「友達に優しい。」
これは、「優しい」という形容詞が曖昧ですね。「友達に優しい」と感じた場面を思い出し、「何をしているのか」具体的にしましょう。
たとえば、
- 鉛筆を忘れた友達に、自分の鉛筆を貸してあげる。
- 友達が困っていると、自分から声をかけてあげる。
- 一人ぼっちの友達がいると、自分から遊びに誘ってあげる。
- 学校を休んだ友達に、自分のノートを見せてあげる。
例②「朝、起こされなくても、決まった時間に、自分で起きる。」
これは、『行動』として適切な表現です。 この表現と子ども様子を見たときに、誰もが納得できる状況として表現されていますね。
例③「『ありがとう』『ごめんなさい』を言う。」
これは、『行動』として適切な表現です。どのような場面で言っているのかをそれぞれで表現できると、より良い表現にすることができます。
例④「お年寄りに親切にする。」
これは「親切」という表現が曖昧ですね。どのような場面で何をして親切だと感じたのかを具体的にしましょう。
たとえば、
- 電車で、お年寄りの人に席を譲る。
- 階段で重そうな荷物を持っているお年寄りを見かけて、荷物を持ってあげる。
- 道に迷っているお年寄りを、目的地まで連れて行ってあげる。
例⑤「部屋が散らかっている。」
これは、不適切とは言い切れませんが、もっと具体的な適切な表現にすることは可能です。何が、どのような状況で、散らかっているのかを表現することができます。どの程度の散らかり具合で「散らかっている」と感じるのか、これを明確にできると、親子間や夫婦間での認識のズレが分かってきます。たとえば、お母さんは散らかっていると思っているのに、子どもやお父さんにとってはこの程度では散らかってると思っていない場合もあります。そうすると、いくらお母さんが「片付けなさい!」と怒っても、散らかっていると思っていないので、片付けるモチベーションにはならないのです。
たとえば、
- 読んだマンガが床に積み重なっている。
- 部屋で食べたお菓子のゴミを、ベッドの下に隠している。
- 脱いだ服が脱ぎっぱなしで、床に置かれている。
- 床が見えないほどに、物が床に置きっぱなしになっている。
例⑥「宿題をしない。」
これは、「宿題をしない」で何をしているのかを具体的にしなければ、『行動』とはなりません。否定形ではなく、「~しないで、○○している」と表現の終わりは肯定形にしましょう。
たとえば、
- 宿題をしないで、ゲームを/本を読み続けている。
- 宿題をしないで、ボーっとしている。
- 宿題を広げるまではするが、取り組まずに寝転がっている。
例⑦「使ったものを出しっぱなしにする。」
これは、『行動』として適切な表現です。頻繁に出しっぱなしにするものがあるのであれば、それを具体的に表現すると、より良い表現にすることができます。できる限り、具体的に考える癖をつけていくことで、子どもはどう考えているか、お母さんが考えていることとズレがあるかもしれないと気付くことができるのです。子どもがどう考えているかが見えてくると、お母さんもイライラせずに、子どもが受け取りやすい方法で伝えることができるようになってきます。
例⑧「声をかけると、オモチャを片付けることができる。」
これは、『行動』として適切な表現です。子どもの自発的な行動ばかりではなく、声掛けがあってできる行動でも、それを含めて表現しましょう。声掛けがあってできる行動も、子どものできる行動の一つと考えていきましょう。その状態で第一ステップはクリアしていると考え、次のステップとして、声掛けの回数を減らすことを目標としていくのです。
例⑨「何度声をかけてもお風呂に入らない。」
これは、「お風呂に入らない」で何をしているのかを具体的にしなければ、『行動』とはなりません。また、「何度声をかけても」というのも、3回なのか、10回なのか、日によって多少の前後はあったとしても、3回と10回は大きく違うので、回数や時間で表現できるようにしましょう。
たとえば、
- 3回声をかけても、お風呂に入らずにテレビを見続けている。
- 10回声をかけても、お風呂に入らずに寝ている。
例⑩「靴を揃えて置く。」
これは、『行動』として適切な表現です。
行動 = 「見えるもの・聞こえるもの・数えられるもの」 + 「~する」
否定形 → 「~しないで、○○している」
形容詞 → 何を見て、そう思ったか、具体的に
副詞 → 回数や時間で明確に
行動を的確に捉えることで、
自分が考えていると、子どもが考えていることの
ズレを把握しよう!